Hacca no Nacca
BIRTHDAY
◆KP情報
探索者は実験装置につながっている間は記憶処理を行われているため、現実のことを覚えていない。
KPCは脱走した事実やこれまでのことを記憶から消されている。
精神的負荷の実験のために現実の様子と仮想ネットワーク空間(以後、仮想空間と呼ぶ)の様子を同時に見せられ、仮想空間の記憶を処理されないままでいる。
KPCは2つの視界があること、仮想空間は1日を何度も繰り返してること、現実にはミ=ゴがKPCの様子を窺っていること、どちらが現実でどちらが夢なのかがわからないことをわかっている。
この状態になってから、KPCは以前に仮想空間内で探索者へ助けを求めたが、心配されたり遠巻きにされるだけで話を取り合ってもらえなかったことがある。
そのために、探索者が異常事態に気がつき話をしてくれるまでは助けを求めようとはしないだろう。
◆特殊ルール
本シナリオには特殊ルールが2つある。
1つは仮想空間内にいる間(つまり、シナリオ『BIRTHDAY』プレイ中)、1日を「朝」「昼」「宵」「夜」の4パートに分けてプレイすること。
6時~正午を『朝』正午~18時を『昼』18時~0時を『宵』0時~6時を『夜』とする。
1パートで移動できるエリアは1エリアだけである。
また、1日のうち1パートは必ず睡眠をとらなければいけない。
睡眠をとらなかった場合、KPは死に直結しない限りどのようなペナルティを与えても構わない。
もうひとつの特殊ルールはPLによる宣言を行うことができることである。
これはTRPGを遊んでいるときにごく自然にロールを行っている行為のことであったり、攻撃時にノックアウト宣言を行うような行為のことであったりする。
◆導入
事前にKPはPLと相談して、探索者が誕生日どのように過ごすかを決めていた方がいい。
今日は探索者の誕生日である。
恋人と過ごすもよし、サークルや部活動のメンバーと過ごすもよし、会社で仕事をするもよし、家族と過ごすもよし、自由に行動して構わない。
◆1日目
探索者は朝、目が醒めると自室からはじまる。
カレンダーにはチェックマークが入っており、今日が自分の誕生日であることを思い出す。
アイデアに成功すると、ぬるま湯に浸かっているときのような奇妙な違和感を体で感じるだろう。
例えば、現実で今起きていることを夢の中で以前見てしまった時のような既視感が一番近い感覚である。
その感覚はずっと続くわけではなかったが、一瞬でもそう感じたのだった。
自室に目星をすると、図書館から借りていた本を見つけるだろう。
返却期限はまだ今日までのようだ。
◆KPCの家
1日目にKPCと連絡を取ることはできない。
KPCの家にKPCはいるが、体調が悪いなどの理由で探索者と顔を合わせようとしないだろう。
中からくぐもった声は聞こえるが、音を拾うことができない。
扉から離れるときに強制ロール1d100を行う。成功値はアイデアで出す。
成功すれば、「もうゆるして、夢なら醒めて」という声がやけにクリアに聞こえるだろう。
これは探索者が以前この場所で聞いたKPCの言葉である。
2日目以降に、異常事態をKPCに話せば、家に招かれるだろう。
KPCとの情報交換は自由にして構わない。
4日目以降はKPCは脳缶になっているが、そのことはわかっていない。
ただ、3日目の夜に久々に長い暗闇の夢を見たことを覚えている。
◆図書館
図書館にきたならば、今月の特集が組まれたコーナーと受付カウンターと検索機がある。
今月は安眠に関する特集が組まれているようだ。
インターネットや図書館を利用し、夢について調べることができる。
夢にはいくつか種類がある。
現実では叶えられない内容を夢で見る願望夢、今のままでいると現状が悪くなることへの警告を表す夢、未来に起きることを予知してみる夢、現状をそのまま反映されたような夢、また、夢の中にいるのに夢だと気がつく明晰夢などがある。
また、あるコラムには「悪夢」のような「明晰夢」から覚めるために「目を覚ませ!」と念じたら、本当に起きることができたと書かれている。
インターネットでこのコラムを読んだ場合、コメント欄に「念じるってどういうことですか?」と書き込みがされてあり、それに対してこのように返事が書かれている。
「現実の私が起きなきゃ!って行動をしたら本当に起きれたんです~!夢の中だと念じたって感じだったんですけど、ベッドで寝てる私は跳び起きたんですよね(笑)」
◆夜イベント
夜の探索パート終了後、寝ていても寝ていなくても、ぐにゃりと世界が歪む。
たっていることもままならず、探索者は座り込み、ずるずると這いずることになる。
起きていようという意志に反して意識を刈り取られる。
意識を刈り取られたはずなのに、探索者の体を舐めるようにミ=ゴの触手が這いずる。
それは足から徐々に身体を登り、耳の中に触手が侵入し、脳に触れる。
SAN値チェック(1/1d3+1)
得体のしれない恐怖は徐々に快楽へと麻痺し、もっと触れていて欲しいと感じる前に、探索者は目覚めを迎える。
2日目夜からアイデアを行う。
成功すると、その触手はねっとりと触れながら自身を観察しているのではないかと思う。
◆2日目
1日目と同じことが繰り返される。
自宅じゃない場所で寝ても、「朝」はかならず自宅から始まる。
前日メールなど履歴が残るもので連絡を取っていた場合、履歴は全く残っていない。
1日を繰り返していることに気がついた探索者はSAN値チェック(0/1d3)
◆3日目
朝目を覚ますといつも通り自宅から始まる。
だが、少し違うところがあるのだ。
背中に違和感を覚える。背中を見ても何もない。
じくりと痛みを感じた気がしたのだ。
3日目以降、外出してKPC以外の人間と接触することがある場合、アイデアを振ることができる。
アイデアに成功すれば、同じ人間の顔を先ほど見た覚えがある。
知人や家族に接触していた場合は、見知らぬ他人の顔に見えるのに当たり前のように貴方と話す。
自分がおかしくなったのではないか、自分の正気を疑わざるを得なくなるだろう。
SAN値チェック(1/1d4)
KP情報だが、この現象はカプセルに眠っている探索者の覚醒を促しているために起きた現象であり、KPCはこのような事態にはなっていない。
4日目はアイデアがなくても他の人間と接触することがあれば、同じ人間の顔を何度も見ることになる。
ここに出てくる人間は探索者たちと同乗していたバスの乗員達である。
◆3日目夜
KPCと共に過ごしている場合、KPCに異変が起きる。
どこかに移動していると怯えだすだろう。
今までに一度も移動をしたことがなかったということが余計に怖いと感じているようだ。
5時頃に糸が切れた人形のようにKPCは動かなくなる。
◆終幕
PLから「目を覚ます」宣言をきく。または、探索者が死亡する。
または、5日目の朝になるとこのシナリオは終わりを迎える。
貴方の体が痙攣し、ゴポリと息を吐いて目を覚ます。
ぬるま湯のような液体の中にいるようだが、何故か息苦しくはない。
体を起こすのは容易だった。
ずきりと背中に痛みを感じる。
見れば、細い管が背中に何本か刺されていた。
ここは一体どこなのだろうか。
自分が今まで見ていたものは一体…?
探索者の冒険が今、はじまる。
DAYLIGHT 前日譚『BIRTHDAY』 完